本屋大賞2019「そして、バトンは渡された」

読書・映画

 本屋大賞…、芥川賞や直木賞ほど小難しくなく読みやすそう…???ということで、手に取ってみた「そして、バトンは渡された」を読んでみました。

設定が新しい

 両親が次々と変わり、いわゆる「複雑な家庭」と思われがちな主人公の女子高生。しかし、実際はそれぞれの親に十分な愛を与えられて育っていて悲壮感ゼロ…、むしろ穏やかな幸福に満たされています。こんな設定がこれまでにはなかったのではないでしょうか?普通、複雑な家庭=(イコール)「思春期を迎えても明るくできない…」とか、「明るくしているが、実は…」とか、影を感じさせる主人公が定番だったのではないでしょうか。

悪人がいない

 両親をはじめ、友人、教師、みな彼女を気遣って、まったく暗い話にならない。それではあまりに現実離れしていると思われがちと作者が思ったのか、彼女は高1の時に思春期らしいイジメに遭う。しかし、このイジメに対しても彼女は飄々としていてイジメは終わる。

 このように、現代では周囲に悪人がそれほどいなくなっているのかも知れない。こんな設定は、一昔前であれば、世間から受け入れられることなどなかったのではないでしょうか。時代が変わったのだと思います。(個人的には、バブル景気を経て、ようやく日本は戦争の暗さから、ご陽気な楽天気質になったのではないかと勝手に思っています。)

クライマックス

 そんな、飄々に生きる彼女にも新たな出来事が起こります。そこからが、この物語のクライマックスとなります。これまで、幼いころからの彼女の人生を知っている読者にとって、読み応えのある回収作業に入ります。それでは、読書をお楽しみ下さい。


そして、バトンは渡された (文春文庫)

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