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自由、人権を学ぶ映画 「それでも夜は明ける」

 香港で脅かされる民主主義の自由。そして、白人vs黒人の差別感情が再燃する米国。人種差別の実態を知り、自由とは、人権とは何かをあらためて考えたい映画として、「それでも夜は明ける」をご紹介します。

それでも夜は明ける 2013年
あらすじ
  奴隷制度のある1841年。ヴァイオリニストのソロモンは
ある日突然拉致され、奴隷として農園に売られてしまう。
そこでは壮絶な虐待にあいながらも、かろうじて尊厳を保ち
そして家族のもとへ帰る。

 日本には謙譲語というものがあるように、部下は上司にへりくだることが多いのに対し、欧米人は言葉に敬語などなくフランクな関係を築いている…、漠然とそのような印象を持っている方も少なくないと思います。

 しかし、この映画を観れば、国や地域、人種など関係なく、暴力の支配の下では、人はここまでへり下らざるを得ないのかを痛感します。主従関係には必ず「暴力」が背景にあるのだと思わされます。

<みどころ①:奴隷制度のリアル>

 奴隷になるということは、主人の言うことは何でも聞かねばならないのです。これは、子供でも知っていることです。しかし、それをリアルに感じている方はどれだけいるでしょうか?日本でも戦時中の軍隊や、戦後の運動部の部活動のしごきなどは、それに近い状況なのだと思います。この映画では、映像化することでそれをリアルに感じることができるのです。小さいお子さんには見せられないため、PG12指定(鑑賞する際にはなるべく保護者同伴をオススメする作品)となっています。

<みどころ②:正義の価値観

 理不尽な奴隷制度など、現代社会では全く通用しません、犯罪です。しかし、その当時ではそれが当たり前で、優しい紳士な白人ですら、普通に黒人奴隷を使っていたのです。それが普通な時代が確かにあったのです。今、我々が生きているこの現代の価値観も、後々、あり得ないと思われる時代が来るのかも知れません。

<みどころ③:絶望>

 夜な夜な主人に弄ばれる少女が、白人の愛人となって奴隷から解放された婦人にこうアドバイスされるのです。「夜を我慢するか、ムチ打ちを我慢するか、のどちらかしかない」彼女は、ある夜、主人公のプラット(そう勝手に名付けられる)に、自分を殺してくれるよう涙ながらせがむのです。

<みどころ④:多勢に無勢>

 そんな奴隷生活の中、稼ぐため奴隷と一緒に働くことになった白人の旅人(ブラッド・ピット)がやってくる。彼は主人に対し、白人も黒人もなく人権があり、今に法律が変わればあなたが追われる身になると論破する。そんな彼に、主人公のソロモンは知人に手紙を書いてくれるよう頼む。その時、旅人は「あなたの話は正しい。しかし、正直に言うと怖い。」と漏らす。どんなに正しい正義でも、世の価値観に対して多勢に無勢。本当に怖い世の中とは、正義が正義として通用しないこと、この現代の価値観も本当に正義はあるのでしょうか?

<みどころ⑤:リアルは更に酷い>

 この映画は、「自由黒人」である主人公が突然拉致されて奴隷として売られる。そして、そこで数々の困難に逢い、そしてついには「自由黒人」に戻ることができるのです。しかし、ラストシーンでは、馬車に乗っていく主人公ソロモンに対して、そこに居続けるほかの奴隷たち。彼ら彼女らは、一生そこから解放されることはないのです。

 つまり、本当に酷いのは、自由だった人が自由を奪われたということ以上に、もともと自由のない場所で生まれ、自由のないまま一生を終えた奴隷たちなのです。

 実は、この映画は実話に基づいた物語であり、主人公本人はその後、奴隷解放運動に身を投じたそうです。


それでも夜は明ける [DVD]
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