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事件に巻き込まれた家族の苦悩「罪の声」

「グリコ・森永事件」をご存じでしょうか?40代以上の方は記憶に、30代以下の方は聞いたことがない方がほとんどかも知れません。1980年代に関西で起きた未解決事件です。私も「どくいり、きけん、たべたら、しぬで かい人21面相」という犯人からのメッセージを覚えています。そんな未解決事件をモチーフにし、「事件に巻き込まれた家族」にスポットを当てた、切り口新しい小説です。

グリコ・森永事件とは

菓子メーカーの社長を誘拐するなどの凶悪性がある一方、コンビニに青酸入りのお菓子を置いて「毒入り危険。食べたら死ぬで」と書いたり、「けいさつのあほどもえ」など警察やマスコミを挑発するなど、それまでの凶悪犯のイメージとはかけ離れたセンセーショナル性がありました。また、コンビニの防犯カメラに写っていた「きつね目の男」も全国的に喧伝された印象的な事件でした。(きつね目の人ってそこいらじゅうにいると思いましたが…)

そんな、子供ながらに記憶に残っている事件なのですが、死者が出なかったこと、身代金などのお金を結局取られなかったことなどから、徐々に記憶も薄れていきました。(ただ、犯人を取り逃がしたということで県警本部長が自殺したり、その後、毒物をばら撒く模倣犯が出て死者が出ているようです…)

主人公は無関係だった家族

今回の小説は、ある日父の遺品から録音された自分の子供の頃の声を発見することから始まります。犯人が身代金受け取り場所を子供の声で指示した録音の声だったのです。亡き父への疑惑を調べる始めることで物語が動き始めます。子供も生まれ、平穏に暮らしていた毎日が、急に暗転し始めるのです。

もう一人の主人公は新聞記者

その一方、新聞社文化部の記者が、突然、過去の未解決事件特集の取材を任させることから、もう一つの物語が始まります。これは、著者が元々新聞記者だったこともあって、スクープを常に求められる新聞社の追い詰められた状況がよくわかる描写となっています。

そして、二人の主人公が交わる

二人の主人公は、それぞれ事件を調べ始めます。二人の調査の過程の心理描写が秀逸で、徐々に小説に夢中になっていきます。そして、ついに二人は出会います。それぞれが誠実な人物であることが、この小説の最後に感動を生むことにつながるのです。

発行、そして映画化

2016年に発行され、2020年に映画化されました。映画では、新聞記者が小栗旬、テーラー(スーツの仕立て屋)が星野源となっていますので、おそらく新聞記者目線が中心なのかも知れません。(まだ観ていません。)

お勧めの小説です。グリコ・森永事件とはいったい何だったのか、など風化しつつある未解決事件をおさらいすることも出来ます。私も、2021年4月のDVD化で映画も鑑賞してみたいと思います。

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